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2009年6月20日 (土)

「太陽亭」でのやすらぎ

Photo  6/16(火)15:00 鶴橋の実家で、葬儀費用の精算のため「ベルコ」の担当者と会うことになっていた。11:45 少し早めに富雄の自宅を出た。妹には昼食をしてから行くと電話を入れた。鶴橋の実家近くの「太陽亭」で昼食を摂ろうと思いその店に入った。オムレツ定食を注文した。

 おばちゃんがテーブルに注文の品を持ってきてくれ食べ始めた。しばらくして、顔を見上げると、あっ!と心の中でつぶやき、すばやく立って、調理場から出てきた男性のそばへ寄った。「太陽亭の兄ちゃん」だった。私が若かった頃、大成通の路地裏を自転車に乗り、出前箱を持ち駆け巡っていた姿が目に浮かんだ。私の網膜の奥底が潤んだ。「覚えてますよ!」と私の方を見て声を掛けていただいた。

 「太陽亭の兄ちゃん」とテーブルに向かいながら、私が幼かった頃、風邪などで寝込んだ時、幾度も、近所のおばちゃんが「太陽亭」へ「かやくうどん」を注文して、自分で木製の出前箱を自宅へ運んでくれて私に食べさせてくれた。私はその情景が50年近く経ても忘れられない。私にとっては、実家に戻るたびに「太陽亭」を思い出していた。「私にとって、“太陽亭”は特別ですねん!」とその兄ちゃんに伝えた。

Photo  先代が洋食メニューを主に「太陽亭」をこの地に開業し、地域特性を考えて和食メニューも取り入れたという。「かやくうどん」のことを話していただいた。しいたけ、たまごが入っており、その当時はどんぶりの上に木蓋をかぶせていた。七味はその蓋の上にと、私はその話を聞きながら、その当時の「かやくうどん」の味わいを思い出した。

 「太陽亭」は昭和8年に開業し、創業76年となる。場末下町の食堂として、電車道(現:千日前通)、旧:市電停留所「大成通1丁目」前において、長きにわたり営業をし続けている。「太陽亭」は、かつてのこの町の光景・情景を見続けてきただろう。「太陽亭の兄ちゃん」は私よりも5歳年長である。二人の「大成通」の記憶は共有されている。会話はとめどもなく続いた。

 「弁天市場」「雷湯」「亀の湯」「市電」「花電車」「ひめこそ神社」「夜店」「駄菓子屋」「紙芝居」「ヤングマン」「トロリーバス」「松下幸之助創業の地」「小説・映画“血と肉”の舞台」「大成小学校」「玉津中学校」等々、話題は事欠かなく延々と会話は続いた。


Photo_2  「太陽亭の兄ちゃん」が店の片隅の棚から小冊子らしきものを私に見せた。それは、平成14年に発刊された大成小学校の創立80周年記念誌だった。私はパラパラとページを繰った。卒業生のメッセージの中のある女性の写真が目に止まった。一瞬、はっきりと理解できなかった。余りの驚きに思考が凍りついていた。

 その女性は有名な方で、さまざまなメディアに出ておられ有名な方だった。卒業生だったのか? 話を聞くと、私の実家から徒歩1分の場所に住んでいらっしゃったと聞いて、よりいっそう不思議な思いに囚われた。

 私はその記念誌を是非とも欲しいと思い、小学校の電話番号を聞きすばやく電話をかけた。卒業生で、記念誌を今見ている。言葉で言い表せないほどに感銘、感激を受けた。その記念誌をいただけないだろうかと伝えた。途中で、「太陽亭の兄ちゃん」が私の電話を取り、追い討ち援助をしていただいた。やっと戴けることになった。

 「太陽亭のおばちゃん」が、突然私に、「小学校へ貰いに行ってきますわ!」と言って自転車で5分の小学校へ自ら出かけていただいた。10分ほどしてもどってこられた。門が閉まっていて開かないという。インターホンで呼べばよいと、ご主人が言うのを聞き、再び小学校へと向かっていただいた。

Photo_3  しばらくして妹から電話が掛かった。ベルコの担当者が実家へ来たという。やむなく、太陽亭を出た。「あとで来ますわ!」と声をかけ店を出た。路地の入口で、自転車に乗った「太陽亭のおばちゃん」に会った。茶封筒に入った冊子をいただいた。「あとで寄りますわ!」と言い徒歩1分で実家に着いた。

 実家での1時間ほどの所要を終え、再び「太陽亭」へ戻った。延々2時間、「大成通」の話に花が咲いて時間を経つのも忘れた。「太陽亭」はずっと続けると、「魂を継ぐ」という想いをその方は私に語った。水俣に生まれ育った作家、石牟礼道子さんの「魂の形見」という言葉がその時、私の脳裏に浮かんだ。まさに同じだった。

 私のふるさと「大成通」の地、場末の町の片隅で、母が亡くなった翌日に、4時間余りにわたり安らぎの時間を与えられ魂の言葉を聞いた。母は永眠したが、私に新たな再生の時間を与えた。人の生命、存在は必ず繋がってゆく。

 心の中で輝き続ける大成通・「太陽亭」へ、ささやかなわが雑文を捧げる。

 

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