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2008年3月 5日 (水)

「ぶんちん」の思い出

 中学校時代の技術実習で、僕は習字などに使う「ぶんちん」を作った。技術室の「万力」を使い、短い鋼材から「ヤスリ」で削り油を塗って仕上げた。その作品を手に持ち下校した。自宅と目と鼻の先にある鉄工所の前に差し掛かった時、顔見知りの鉄工所のおっちゃんが、たばこを吸いながら午後の休憩をしていた。

 「しげる、何を持ってるんや?」と話しかけられて僕は立ち止まり、「技術実習で『ぶんちん』を作った」と答えた。見せろと言うので左手に持っていた「ぶんちん」を差し出した。おっちゃんは、それをじっと見ながら僕に鉄工所の中へ入れと言った。鉄くずを踏みながら、薄暗く狭い、油の匂いが充満する鉄工所に僕は足を踏み入れた。

 馬鹿でかい「万力」にその「ぶんちん」をはさんだ。おっちゃんは、大きな「ヤスリ」で削り、瞬く間にきれいに仕上げた。出来上がった新たな「ぶんちん」を僕は手に取った。すごくきれいであった。おっちゃんはすごい!と感心した。ふと、その「万力」を見た。これが「万力」だとすると、技術教室にあったのは、「万力」ではなく「千力」「百力」でしかなかった。

 おっちゃんにお礼を言い、鉄工所を出て自宅に戻った。家の中で「ぶんちん」を見ている時に、「おっちゃんは、技術実習の時間だけ、先生になったらいいのに」と僕の脳裏を過ぎったことを昨日のように思い出す。先生という存在は、「学校内」だけにいるのではなく「学校外」にもいる。僕のその考えは、あれから40年経った今でも変わらない。

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