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2007年11月22日 (木)

僕がはじめて本を買った日

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 54歳の今、わが部屋の壁面いっぱいに本という代物が書棚に鎮座している。いつから、本を読むようになったのだろう? 僕が子どもだった頃、大阪・鶴橋の路地裏のわが家に、本と呼べるほどのものはなかった。家族が本を読んでいる姿などを見かけたことがなく、わが家は読書をするという環境からは程遠かった。僕は小学校・中学校時代は本と無縁で時を過ごした。その両時代に読んだ本と言えばわずかの一冊、学校の宿題で与えられた読書感想文を一度ぐらいはまじめに書こうと思い、中学校の図書館から借りたドイツの作家ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」という小説だけだった。

 高校に入学してサッカ-ボ-ルばかりを追いかけていた。高校2年生の夏休みに、僕にとっての歴史的な大転換点がやってきた。それは、まさしく革命だった。サッカ-部の練習が終わり自分のクラスの教室に立ち寄った時に一瞬、躊躇して教室入り口で立ち止った。ある女子が、教室の窓側、後方隅っこにある席に座って一人で本を読んでいた。目と目が合ってしまった。ドキドキして胸が高鳴りながらやむなく教室へ入った。蝉の鳴き声だけが聞こえ、静けさが漂う教室で二人きりだった。

 その女子に声をかける言葉が見つからないでいた。唐突にも、その女子が僕に「練習は終わったの? 今、本を読んでるの 本を読むことは好き?」と聞いてきた。ほんとうは「ぜんぜん」「まるっきり」と素直に言わなければならないと思いながら、「あまり、読まない!」とぶっきらぼうに、あいまいに返事を返してしまった。「何を読んでいるの?」と僕はぼそぼそとその女子に聞いた。「夏目漱石の『坊ちゃん』を読み始めたところよ」と、うすっぺらな文庫本を見せてくれた。その本を手に取り、ぱらぱらとペ-ジを開いていると、その女子の手のぬくもりが感じられるようで僕の胸がさらに高鳴った。

 その日の夕方、高校から最寄り駅のJR環状線・玉造駅まで、サッカ-部の友人たちといっしょに下校した。玉造交差点の信号を渡ったところでみんなと別れた。その途端に、手で押していた自転車に飛び乗って、日の出通り商店街に入り、すぐ右側にある「中路書店」に駆け込んだ。新潮文庫の棚をくまなくさがし、うすっぺらなその文庫本を見つけ出した。僕は、なけなしの小遣いで、その時、夏目漱石の「坊ちゃん」を買い求めた。17歳の夏休み、僕が自分自身で本を買ったはじめての日だった。

「玉造日の出通商店街」Webサイト

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